このページでは「だ液のはたらきを調べる対照実験」について解説しています。
その他の消化液のはたらきなどは→【消化のしくみ】←を参考に。
1.だ液のはたらきを調べる実験
まずは、次のような手順で行う実験について紹介します。
手順
①3つのビーカーを用意し、それぞれに5℃の水、40℃の水、80℃の水を入れておく。
②その3つのビーカーに2本ずつ試験管を入れる。
1本の試験管にはだ液とデンプンのり。
もう1本には水とデンプンのり。
試験管は全部で6本。
この6本の試験管をA~Fとする。(↓の図)
③しばらく置いておいたA~Fの試験管の液を2つのペトリ皿に分けていく。
1つのペトリ皿にはヨウ素液を加える。
もう1つにはベネジクト液を加える。
この実験ののち、どのような結果になるかを考えてみましょう。
先に、前提となる知識を紹介しておきます。
■だ液のはたらき
だ液は消化液の一種。
食べ物の消化を助ける消化酵素アミラーゼを含んでいる。
アミラーゼによってデンプンを糖(麦芽糖)に変えることができる。
■ヨウ素液
デンプンと反応して青紫色になる。
■ベネジクト液
糖と反応して赤褐色になる。
※沸騰石を入れて加熱しながら調べる。
※糖の種類(ブドウ糖なのか麦芽糖なのか)までは判断できない。
では実験結果を考えましょう。
試験管A
だ液は低温ではあまり働きを示しません。
そのためデンプンはわずかにしか分解されず、糖は少量しか生じません。
●デンプン:少しある → ヨウ素液は少し反応
●糖 :少しある → ベネジクト液は少し反応
試験管B
そもそもだ液が入っていません。
そのためデンプンはそのまま分解されず、糖は生じません。
●デンプン:あり → ヨウ素液は反応する
●糖 :なし → ベネジクト液は反応なし
試験管C
だ液はヒトの体温付近でもっともよく働きます。
そのためデンプンは分解され、すべて糖に変わってしまいます。
●デンプン:なし → ヨウ素液は反応なし
●糖 :あり → ベネジクト液は反応あり
試験管D
そもそもだ液が入っていません。
そのためデンプンはそのまま分解されず、糖は生じません。
●デンプン:あり → ヨウ素液は反応する
●糖 :なし → ベネジクト液は反応なし
試験管E
だ液は高温でははたらきを失ってしまいます。
(もしこのあと40℃付近に戻しても、はたらきが元にもどることはありません。)
そのためデンプンはそのまま分解されず、糖は生じません。
●デンプン:あり → ヨウ素液は反応する
●糖 :なし → ベネジクト液は反応なし
試験管F
そもそもだ液が入っていません。
そのためデンプンはそのまま分解されず、糖は生じません。
●デンプン:あり → ヨウ素液は反応する
●糖 :なし → ベネジクト液は反応なし
まとめると・・・
以上の結果をまとめると、↓の表にようになります。
対照実験として結果を考察する
このように少しずつ条件を変えて、結果を比べる実験方法のことを対照実験といいます。
※詳しくは→【対照実験とは】←で説明しています。
条件の1つだけ異なるものを比較して、何かわかることはないかな?と調べるのが対照実験の考え方です。
試験管CとDを比べてみよう
試験管CとDを比較します。
条件のちがいは、だ液が入っていたか、そうでないか。
だ液が入っている試験管Cでは、「デンプンなし・糖あり」という結果です。
だ液が入っていない試験管Dでは、「デンプンあり・糖なし」という結果です。
だ液の有無以外の条件はそろっているため、Cで「デンプンなし・糖あり」という結果になったのは、だ液が原因だとわかります。
言い換えると「だ液のはたらきによってデンプンがなくなり、糖ができた」ということを確かめられます。
試験管A・C・Eを比べてみよう
試験管AとCとEを比較します。
条件のちがいは、温度(5℃・40℃・80℃)。
5℃の試験管Aでは、「デンプンあり・糖なし」という結果。
40℃の試験管Cでは、「デンプンなし・糖あり」という結果。
80℃の試験管Eでは、「デンプンあり・糖なし」という結果。
温度以外の条件はそろっているため、Cで「デンプンなし・糖あり」という結果になったのは、温度が原因だとわかります。
「5℃や80℃のときよりも40℃のときの方がデンプンは糖に変えられやすい」とわかります。
「だ液のはたらきによってデンプンがなくなり、糖ができた」という考察結果も組み合わせると・・・
「だ液は5℃や80℃のときよりも40℃のときの方がよくはたらく」とわかります。
このようの対照実験の考え方を理解しておきましょう。
POINT!!
・だ液はデンプンを糖に変える。
・だ液は体温付近でも最もよくはたらく。
・ベネジクト液を使うときは、沸騰石を入れて加熱する。
・対照実験は、条件の1つだけ異なるものどうしを比較する。
・対照実験の問題は、表に条件と結果をまとめるとわかりやすい。
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