このページでは斜面を使った仕事(仕事の原理)について解説しています。
より基本的な仕事の計算問題は→【仕事の基本】←も参考にしてください。
1.仕事の原理
物体に力を加えて、力の向きに物体を動かすこと。
求め方は・・・
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
道具を使っても使わなくても仕事の量は変わらないこと。
仕事には「ものを持ち上げる」などがあります。
ものを持ち上げるには「手で持ち上げる」「”てこ”を使って持ち上げる」「”滑車”を使って持ち上げる」などいろいろな方法があります。
このとき、同じ高さに持ち上げるのであれば、人がする仕事は同じです。
これを仕事の原理といいます。
2.斜面を使った仕事
以下では100gの物体にはたらく重力を1Nとします。(1kgならば10N)
↓のような場合を考えます。
図1では6kgのおもりを真上に5m引き上げています。
図2では6kgのおもりを斜面を使って5mの高さまで引き上げています。
斜面を使うとどうなる?
図2のように斜面を使ってものを持ち上げるのは、図1と何が異なるのでしょうか。
図1のように、真上に持ち上げる場合、人は60Nの力を加えなければなりません。
図2の場合は、人が加える力がちがいます。(60Nではない)
図2において、物体にはたらく力には重力があります。
重力は物体の中心から下向き。
人はこの力に逆らって物体を持ち上げる・・・のではありません。
↓のように重力の斜面に平行な方向の分力に逆らって、物体を持ち上げます。
重力の斜面に平行な分力はもちろん60Nより小さいです。
よって人が引く力は60Nより小さくなります。
このように斜面を使ってものを持ち上げると、直接真上に持ち上げるよりも小さい力で済みます。
その代わり、人が糸を引く距離は長くなります。
図1では「真上に5m引く」ですが、図2では「斜面にそって10m引く」です。
仕事の量を計算
図1の仕事=力×力の向きに動かす距離=60N×5m=300J
となります。
図2の仕事は、手で引く力が何Nかわかっていません。
「力×力の向きに動かす距離」では求めることができません。
このような場合に仕事の原理を利用します。
図1も図2も、6kgのおもりを5m持ち上げるというのは変わりません。
「同じ重さのおもりを同じ高さだけ持ち上げるのであれば、仕事の量は同じ」であるので
図2の仕事=図1の仕事=300J・・・(☆)
となります。
ここで(?)Nを求めてみましょう。
図2では、(?)Nの矢印の方向に10m引いているので
図2の仕事=(?)N×10m
と表すことができます。
これは先ほどの(☆)の300Jと等しいので
(?)N×10m=300J
となり、(?)N=30Nとわかります。
例題1
(答)
まず仕事を求めます。
この物体を直接真上に4m持ち上げたとすると、その仕事の量は
20N×4m=80J
斜面を使って4m持ち上げても、仕事の量は変わらないので
人が物体にした仕事=80J・・・(★)
となります。
実際には(?)Nの力で、その方向に8m引いているので
仕事=(?)×8m
と表せます。
これは(★)の80Jと等しいので
(?)×8m=80J
となり、(?)=10Nとわかります。
例題2
(答)
まず仕事を考えましょう。
この場合は仕事の原理をはじめに考える必要はありません。
人は10Nの力で引き、その方向に6mで引いているので
人がした仕事=10N×6m=60J
となります。
物体の重さをx(N)としたとき、直接真上に持ち上げる仕事は
x(N)×2m=2x(J)
となります。
仕事の原理より
2x=60
となり、x=30Nとなります。
30Nより、物体の質量は3kgとわかります。
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中3物理【道具を使った仕事①】
この2Kgは20Nとなっていますがこの
引く力をx(N)とします。
①より
x(N)×8m=8x(J)・・・・・はN=1ではないですか?
位置エネルギーが増加しているので
②より
20N×4m=80J・・・・・・ここがいきなり80J
この部分解説お願いします。
①と②はどちらも仕事を求めているため等しいです。
8x(J)=80(J)
x=10N
ヤマキマサヒロ様
コメントありがとうございます。
仕事の量は次の2つの求め方ができます。
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
または
仕事(J)=その物体のもつエネルギーがどれだけ変化したか
この問題では、斜面を使って2kgの物体を4mの高さまで持ち上げています。
はじめより高い位置に動いたため、「位置エネルギー」が増加したと考えられます。
位置エネルギーの求め方は「位置エネルギー(J)=重さ(N)×高さ(m)」です。
この問題で、
重さは20N(1kgの物体にはたらく重力は10Nなので、2kgならば20N)
高さは4m
です。
そのため増加した位置エネルギーは
20N×4m=80J
となります。
そのため
仕事(J)=その物体のもつエネルギーがどれだけ変化したか
なので、物体にした仕事は80Jとなるのです。・・・(ア)
一方で、この物体を糸をつけて引っ張っていますが、この引っ張る力が何Nなのかはわかっていません。
ここでその力をx(N)とします。
糸をx(N)で、その方向に8m引っ張っています。
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
の式を使って仕事を求めると
仕事=x(N)×8(m)=8x(J)・・・(イ)
となります。
(ア)(イ)はどちらも同じ仕事を考えています。
そのため
8x(J)=80(J)
x=10N
となるということです。