このページでは斜面を使った仕事(仕事の原理)について解説しています。
より基本的な仕事の計算問題は→【仕事の基本】←も参考にしてください。
1.仕事の原理
■仕事
物体に力を加えて、力の向きに物体を動かすこと。
そして物体の持つエネルギーを変化させること。
求め方は・・・
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
仕事(J)=エネルギーの変化量
■仕事の原理
道具を使っても使わなくても仕事の量は変わらないこと。
2.斜面を使った仕事
斜面を使って物体を持ち上げる問題について紹介します。
まず、仕事の量の求め方は2通りです。
$$仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)$$
$$仕事(J)=エネルギーの変化量・・・①$$
①の式について考えてみましょう。
斜面を使って物体を持ち上げるということは、物体の位置エネルギーが増加します。
つまり①の式での「エネルギーの変化量」とは「位置エネルギーの増加量」のことになります。
位置エネルギーは次の式で求められます。
$$位置エネルギー(J)=物体の重さ(N)×高さ(m)$$
①の式は、この式に置き換わります。
よって、斜面を使って物体を持ち上げる問題では、次の2通りの方法で仕事を求めることができるのです。
求め方その①
$$仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)$$
求め方その②
$$仕事(J)=重さ(N)×高さ(m)$$
例題1
下の図のように斜面上に2kgの物体を置き、糸で斜面方向に8m引き上げた。
このとき物体の高さは4m高くなった。
この物体を何Nの力で引き上げたか。
ただし摩擦や空気抵抗は考えない。
(答)
上に記した求め方その①と求め方その②を使います。
この問いでは「物体を何Nで引いたか」がわかりません。
これを x(N) とします。
求め方その①より
$$仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)=x(N)×8m=8x(J)・・・③$$
求め方その②より
$$仕事(J)=重さ(N)×高さ(m)=20N×4m=80J・・・④$$
③と④はどちらも同じ仕事の量を表します。
つまり等しいです。
よって
$$8x(J)=80(J)$$
$$x=10N$$
物体を引いた力は10Nとわかります。
例題2
下の図のように、斜面上に質量のわからない物体を置いた。
この物体を、糸を使って10Nの力で斜面方向に6m引き上げた。
このとき物体の高さは2m高くなった。
物体の質量は何kgか。
ただし摩擦や空気抵抗は考えない。
(答)
求め方その①より
$$仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)=10N×6m=60J・・・⑤$$
物体の重さが何Nかわかっていません。
ここで物体の重さを x(N) とします。
求め方その②より
$$仕事(J)=重さ(N)×高さ(m)=x(N)×2m=2x(J)・・・⑥$$
⑤と⑥は等しいため、
$$60J=2x(J)$$
$$x=30N$$
30Nを質量になおすと3kg(または3000g)です。
よって3kgが正解です。
POINT!!
斜面の問題の解き方
わからないものを x として、次の式を使って2通りに仕事を表してみよう!
求め方その①
$$仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)$$
求め方その②
$$仕事(J)=重さ(N)×高さ(m)$$
※力の分解から考えることもできます。
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中3物理【道具を使った仕事①】
この2Kgは20Nとなっていますがこの
引く力をx(N)とします。
①より
x(N)×8m=8x(J)・・・・・はN=1ではないですか?
位置エネルギーが増加しているので
②より
20N×4m=80J・・・・・・ここがいきなり80J
この部分解説お願いします。
①と②はどちらも仕事を求めているため等しいです。
8x(J)=80(J)
x=10N
ヤマキマサヒロ様
コメントありがとうございます。
仕事の量は次の2つの求め方ができます。
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
または
仕事(J)=その物体のもつエネルギーがどれだけ変化したか
この問題では、斜面を使って2kgの物体を4mの高さまで持ち上げています。
はじめより高い位置に動いたため、「位置エネルギー」が増加したと考えられます。
位置エネルギーの求め方は「位置エネルギー(J)=重さ(N)×高さ(m)」です。
この問題で、
重さは20N(1kgの物体にはたらく重力は10Nなので、2kgならば20N)
高さは4m
です。
そのため増加した位置エネルギーは
20N×4m=80J
となります。
そのため
仕事(J)=その物体のもつエネルギーがどれだけ変化したか
なので、物体にした仕事は80Jとなるのです。・・・(ア)
一方で、この物体を糸をつけて引っ張っていますが、この引っ張る力が何Nなのかはわかっていません。
ここでその力をx(N)とします。
糸をx(N)で、その方向に8m引っ張っています。
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
の式を使って仕事を求めると
仕事=x(N)×8(m)=8x(J)・・・(イ)
となります。
(ア)(イ)はどちらも同じ仕事を考えています。
そのため
8x(J)=80(J)
x=10N
となるということです。