このページでは「てこ」や「輪軸」といった道具を使った仕事について解説しています。
また中学では通常学習しない「力のモーメント」についても解説しています。
やや発展的な内容となっています。
そのため「仕事とは何か?」を→【仕事とは】←のページで理解しておきましょう。
1.仕事について知っておきたいこと
→【仕事とは】←のページでも解説していることです。
まず仕事とは次のように求めます。
仕事(J)=力(N)×力の向きに動いた距離(m)
また一方で仕事には次のような意味もあります。
仕事とは、物体のエネルギーを変化させること。
多くの問題で「ものを持ち上げるという仕事」がテーマになります。
ものを持ち上げるということは、ものの高さが高くなります。
すなわちものの位置エネルギーが変化します。
つまり「物体を持ち上げる」という問題では
物体にした仕事=物体の位置エネルギーの変化量
という関係にあります。
※ちなみに位置エネルギーは次の式で求めます。
位置エネルギー(J)=重さ(N)×高さ(m)
2.てこを使った仕事
■てこ
「てこ」とは以下のような道具です。
遊具のシーソーもてこの1つと言えます。
一方の端を押すことで、物体を持ち上げます。
例題1
下図のように「てこ」を用いて6kgの物体を1m持ち上げたい。
そこでてこの右端を一定の大きさの力で押した。
ただし摩擦や空気抵抗は考えないものとする。
(1) てこの右端を何m押せばよいか。
(2) てこの右端に加えた力は何Nか。
(3) 手がした仕事は何Jか。
(答)
(1)
てこの右端を押した「力の大きさ」「距離」ともにわかっていません。
この場合は図中の赤色の部分の長さ「2m」と「3m」を利用します。
(支点からの距離=うでの長さと呼びます)
以下のような三角形を考えましょう。
この三角形どうしは互いに相似な関係にあります。
相似比は2m:3m=2:3です。
つまり・・・
左端を1m持ち上げたい。
そのために右端をx(m)押すとする。
三角形の相似比より
2:3=1m:x(m)
これを解いてx=1.5mとなります。
正解は1.5mです。
(2)
この問いでは6kgの物体の高さが1m上がっています。
つまり6kgの物体の持つ位置エネルギーが増加しています。
その増加量は
60N×1m=60J
仕事=エネルギーの変化量なので
物体がされた仕事=60J・・・①
となります。
ここで、手で右端を押す力をy(N)とすると
手で右端を押す力=y(N)
手で右端を押す距離=1.5m ((1)より)
であるので
手がした仕事=y(N)×1.5m=1.5y(J)・・・②
①と②は等しいはずなので
1.5y(J)=60(J)
これを解いてy=40(N)
よって40Nが正解となります。
(3)
(2)より60Jです。
ここで補足です。
てこを支えているところを支点といいます。
支点から力までの距離のことをうでの長さといいます。
例題7について下図のようなことを考えてみましょう。
てこの左端には60N、右端には40Nの力がはたらいていました。
支点から60Nの力までのうでの長さは2m、支点から40Nの力までのうでの長さは3mです。
この力とうでの長さの積(力×うでの長さ)を求めましょう。
支点から左について
60N×2m=120N・m
支点から右について
40N×3m=120N・m
このように求められる「力×うでの長さ」を力のモーメントと言います。
力のモーメントとはてこを回転させる力のはたらきのことです。
左端60Nの力しか加わっていないとするとてこは反時計回りに回転します。
この左端60Nはてこを反時計回りに回転させるはたらきがあります。
このはたらきの強さ(=力のモーメント)が
60N×2m=120N・m
と求められるわけです。
一方で右端40Nの力はてこを時計回りに回転させるはたらきがあります。
このはたらきの強さ(=力のモーメント)が
40N×3m=120N・m
となるのです。
いま反時計回りのモーメントと時計回りのモーメントの大きさはともに120N・m。
等しくなっています。
力のモーメントが等しいと、てこは動きません。
(力のモーメントのつり合い)
「静止している物体」では必ず力のモーメントがつりあっています。
つまり下図で以下のような式が成り立ちます。
■力のモーメント
物体を回転させようとするはたらきを表す値。
次の式で求める。
力のモーメント=力×うでの長さ
3.輪軸を使った仕事
■輪軸(りんじく)
輪軸とは次のような道具です。
大きな輪の中心部分に小さな輪を固定し、2つの輪が同時に回転するようにした道具です。
例題2
下図のように輪軸を使って6kgの物体を1m引き上げたい。
ただし摩擦や糸の重さは考えない。
(1)右端の糸を何Nで引けばよいか。
(2)右端の糸を何m引けばよいか。
(答)
(1)
力のモーメントを使うとすばやく解けます。
輪軸を次のような「てこ」と考えて解いてみましょう。
手で引いた力をx(N)として
反時計回りのモーメント=60N×0.2m=12(N・m)・・・①
(↑てこの左端に加わる力によるモーメントのこと)
時計回りのモーメント=x(N)×0.3m=0.3x(N・m)・・・②
(↑てこの右端に加わる力によるモーメントのこと)
①と②は等しいはずなので
12(N・m)=0.3x(N・m)
これを解いてx=40N
つまり40Nが正解となります。
(2)
6kgの物体の高さが1m上がっているので
位置エネルギーの増加量=60N×1m=60J
よって
物体がされた仕事=60J・・・①
一方で手が糸を引いた長さをz(m)とすると
手が糸を引く力=40N ((1)より)
手が糸を引いた長さ=z(m)
であるため
手がした仕事=40N×z(m)=40z(J)・・・②
①と②が等しいはずなので
60J=40z(J)
これを解いてz=1.5m
よって1.5mが正解です。
※力のモーメントは、ふつう中学校では学習しません。高校の物理の授業で学習します。
(中学受験で習った人はいるかもしれませんね。)
そのため近年の高校入試でもほとんど出題はありません。
有名なのはH18年度東大寺学園の「傘」の問題でしょう。
興味がある人はやってみてください。
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